サバサバ女子が「男として生きなきゃ」と思うようになった理由

中村陽子/心理カウンセラー
女性なのにどこかで「男として生きなきゃ」と思ってきた。
役割として「長男的な生き方」をしてきたかもしれない。
だけどほんとは心の中に女の子な私がいるのです。

男前な私と、姫な私の二面性が……

男の部分を、バリバリ成長させてきた。
そのため、判断力、行動力、客観性、論理的思考……などなどをしっかり持っていたりします。
面倒見がよくて、姉御肌。人から必要とされることを率先して見つけて、突進していく。
「パワフルだよね」と周りからよく言われます。
「パワフルさ、持て余しちゃってるんですけど……」そんな人も多いでしょう。
(余らしてるなら、使いましょう)

場合によっては、自分のパワフルさを表に出してはいないものの、仕事や恋愛で「気づくと漏れ出てた……」ということも少なくありません。

「そのあたりの男性より、私のほうが男らしいし、なんでもできちゃう!」
「というか、男らしい男って、私の周りにいないんですけど……」
そんなサバサバ女子も、少なくありません。

「男として生きなきゃ」という道を貫くことに違和感がないなら、問題ないんです。

でも……心の奥には女の子の自分もいる。

そして、心の奥の女の子が望んでいることと、実際に自分が生きている方向の間にズレがある感じがする。そんな感覚も持っていたりします。

また、「私、強いですけど、何か?」という鎧を着ていることも少なくありません。

「役割としての男性性」と「鎧としての男性性」。
これらを身にまとっているのは、サバサバ女子だけではありません。
実は、男性も同じなんですね。

サバサバ女子は、役割としての男性性と鎧としての男性性を「これが私だ」と思って生きているところがあります。
でも、心の奥のどこかで「本当は違う生き方も、したいかも」とも思っている。

その「本当は違う生き方も、したいかも」がもっと表に出てくると、いろいろなことが変わり始めます。

役割としての男性性と鎧としての男性性がゆるむと……。
「本当は違う生き方、したいかも」が出てきやすくなるんです。

そこで今回は、サバサバ女子が「男として生きなきゃ」と思った理由についてみていきます。
まずは「役割としての男性性」についてです。

サバサバ女子が、男の子にならなきゃと思うようになったわけ

ここから、少し私自身の話を。
(当てはまることがあるかも……と感じることがあったら、拾ってみてくださいね)。

もちろん私も、バリバリの男前な女の子(でした)。
小学校の低学年のころから、男言葉をしゃべっていました。
子どもの私は、「自分が男の子であるほうが、周りが喜ぶ」と、思ったみたいなんですね。

覚えているのは、子どもの頃に母から聞かされていたある言葉です。
「結婚前に、占い師に見てもらったの。そしたらね、いい男の子が生まれるって言われたのよ~」
何十回聞いたか、わかりません。
で。素直な子どもの私は「男の子にならなきゃ~」と思ったみたいなんです。

声が低かったことも、男の子化に影響しました。
小学校低学年のときに、たまたま「女番長」と言われたんですね。
声が低かったので、「女番長」と言われたようなんです。
特に、何の意味もなく、誰かがそう言った。

で、そのとき。
素直な子どもの私は、やっぱり思ったんです。
「番長って言われたから、番長にならなくちゃ」
そこから男の子言葉を使うようになった気がしています。
(いまだに「ヤバイ」「マズイ」「〇〇ッス」と男子言葉の名残がバリバリ出ます)

子どもは単純なので、ちょっとした一言を「そうなんだ」と思い、「周りはそれを望んでいるのかな?」と、言われた言葉通りの自分になろうとすることが。

子どものころに「こうならなきゃ」と思った想いは、何ですか?

例えば。
お父さんが、「お前が男の子だったら、一緒に野球ができたのに」と言ったとか。
親戚のおばさんが「あんたが男の子だったら、この家を継いでもらえたのに」と言ったとか……。

誰かが発したふとした一言から「男の子になることを、私は望まれているのかな?」と思ってしまうことはよくあります。

また、言われた記憶はないものの、家が事業をしていて「お父さんは、この仕事を継いでもらいたいって思ってるんじゃないかな」と思ったということも、よくあります。

母のようにはなりたくない

母親との関係性も読み解くうえでポイントになります。

「母のようにはなりたくない」
多かれ少なかれ、娘は母親に対してこんな思いを持つものです。

自覚していることもあれば、無自覚なこともあります。

けれど「母のようになりたくない」という思いがある分だけ、母親的な生き方を否定してしまうことがあるんです。

専業主婦だった母。いつも父親の愚痴ばかり言っていた。
でも働いていないから、父と別れるわけにもいかない。
専業主婦だと、あんなふうに不満ばかりがたまってしまうんだ。
私はあんなふうには、なりたくない。

たとえば、そう思ったことが、今の生き方につながっていることもあるんです。

結婚して、家庭をつくり、子どもを育てる。

その生き方が手に入っていないとしたら、もしかしたら母親の生き方を否定しているからかもしれないんですね。

私自身は、母を見ながら「女であることは、不自由だ」と感じていました。

だから結婚して男性に養ってもらう生き方をイメージしたことが、40歳過ぎるまで一度もなかった気がします。
「女って、不自由らしい。私は、ちゃんと一人で生きていける力をつけなきゃ」と思い続けてきたんですね。

男のようにならなきゃと思う理由はいろいろ

子どもの頃に、両親の仲が悪いように感じ、結婚に希望を持てなくなった場合も、同じように「ちゃんと一人で生きていけるようにならなきゃ」と思うことがあります。

また、男きょうだいがいて、「あなたは女の子なんだから〇〇しちゃダメ」と言われて育ったり、お兄ちゃんのほうが優遇されてると感じたことで「女って、損」と思うこともあります。
男きょうだいの仲間に入れてもらいたくて、男の子っぽくなろうとすることもあります。

さらに。
誰かのために男の子になるケースもあります。

母親が女性的で頼りなかったので、自分が強くならなきゃいけなかった。
弟や妹たちの面倒をみるために、自分がしっかりしなきゃいけなかった。
父親が頼りなく、母親の夫役をしなければと感じた。
そんなことがあると、「私が家族を守ろう、支えよう」と頑張り、男の子のような生き方になることがあります。

家庭内でのお父さんの立場があまりに弱かったり、頼りない存在すぎて、「男に頼る生き方はしちゃいけない」と思うこともあるようです。

女の子というよりは、長男。
「自分がしっかりして、この家を支えなきゃ」と感じて、男の子道を生きはじめる。
サバサバ女子がそんなルートを辿ること、けっこう多いんです。

けれど、ここにあるのは愛なんですよね。
「誰かのために、男の子にならなきゃ」と思った、愛なのです。

母親の長男、夫役をしていることも

女性なのに「男として生きなきゃ」と思いながらここまできたオス化女子。

「女って、損」と思って、内面に男の子マインドを育ててきた人もいれば、
子どもの頃に、「私は男の子として生きなきゃ(誰かのために)」と思った人もいるようです。
女の子なのに長男役を引き受けることも、よくあります。

さて。
私自身も、長男役をしていた気がします。

というのも、
小学生のころに、母からよく言われていたことがあったんです。
「あなたが、お母さんに家を建ててくれるよね~。老後の面倒も見てくれるよね~」

その言葉を聞いたとき、「そっか。私は親に家を建てる経済力を持てるようにならなきゃ」と思ったわけです。
子どもって、素直ですね~。

当時。
母から、父の不満を聞かされていたことも影響していたようです。

子ども時代というのは、両親が結婚して5~15年目くらいにあたります。
この時期、夫婦関係はラブラブ期を通り過ぎていることが多いんです。

夫婦間で「どちらが正しいか」を争ったけんかが多かったり、夫婦関係が冷戦状態(デッドゾーン)の真っ最中ということが多いんですね。
パートナーシップそのものが、ケンカ期や冷戦期にあたっていることが多いのです。

そんな両親であっても、結婚前や新婚時代にはアツアツ期もあったはずなんですけどね。
けれど残念ながら、子どもが両親のアツアツ期を見られないことは少なくありません。

我が家も……母と父の仲がよいようには、子どもの目にはまったく思えませんでした。
子どもの私からは、母が父を好きなようには、見えなかったんです。

親のグチを子どもは真剣に聞いてしまう…

けれど。
いまから思うと、ただのグチだったんですよね。
父への不満も、グチる相手がいなかったから、子ども相手に言っていただけなんです。
母の満たされない何かや将来への不安を、子どもに言っていただけなんです。

真に受けたのは、私……。
子どもは、真に受けちゃいますから(><)

あのころの母の期待が重かった――と長い間、思っていました。

でも……。
「長男をやることを母に求められた」と思ってしまったのは、自分でした。
自分がそう思ったのです。自分がそう解釈したのです。
自分が「家を建ててあげられるようにならなきゃ」と思ったのです。

ここに気づくのって、少々大変。
でもね、気づけてよかったと心から思っています。
「自分がそう解釈したんだ」と思えると、人生を自分の手に取り戻せるんです。

誰のせいにすることなく、「そうか、自分がそう思って決めてきたのか」と思えば、「じゃあ、違う道を選ぶこともできるんだ」と思えるようになるのです……。

「本当はこうならなきゃいけないのに……」を持ち続けていませんか?

女性なのに「男として生きなきゃ」と思いながらここまできたサバサバ女子。
男として生きられるほどの、とても大きなパワーの持ち主です。
でも、「誰かのために、男にならなきゃ」と思ってやってきたとしたら……。
どこかで、息切れしてしまうこともありますよね。

社会人になってすぐ実家を出たタイプだった私は、
子どもの頃に感じていた「親の期待」は、もうとっくに断ち切ったと思っていたんですね。

でも。ぜんぜんそうではありませんでした……。
癒着って、くっついているのは分かりやすいけれど、バーンと離れる癒着もあるんです。

社会に出てから、「一家の大黒柱になれる経済力を持たなきゃ」とずっと思い続けていました。
恋人を選ぶときも、なぜかわざわざ、経済的に不安定な人を選んでいたんです。

同じ年齢の男性が2人いるとします。
経済力のある安定したサラリーマンと、カツカツ生活のフリーランス男性。
なぜか後者を選んでいたんですね。

安定した経済力のある男性を選ばない自分がいたんです。
そっちに行きたい気持ちはあるのに、押しとどめる自分がいる。
「一家の大黒柱になれる経済力を持つためには、頼れるタイプの男性と結婚しちゃいけない(寄りかかっちゃうかもしれないから)」と、若いころは思っていた気がします。

いい夫、いいお父さんになり、家庭を築いていけそうな男性は、まったく視界に入ってきませんでした。
いま振り返ると、周りにいたんです。いっぱい。
でも、視野に入ってこなかったんですね。

自分の中で「親に家を建てられる経済力を持たなきゃいけないのに、できていない」という思いは、ずっと続いていました。
いちおう頑張るし、近いところまでは行くんだけど、手に入らない。
失敗して会社をクビになったりしつつ、それでも「そうならなきゃ」の思いは消えなくて、何度もトライしたものの実現させることはできなくて……。

「親に家を建てられる経済力を持たなきゃいけないのに、できていない。本来ならそれが実現できるポジションに就いていなきゃいけないのに、ぜんぜん就けていない……」

「男性としての成功」を求めるものの、手にできていないことにずっと失敗感を持ち続けていました。

「本当なら、こうなっていなきゃいけないのに。できていないじゃないか!」
「ダメじゃないか、ダメじゃないか。ぜんぜんダメじゃないか!」と責める自分を、長い間、自分の中に抱えていた気がします。
そして、燃え尽きて……。

「男性としての成功を手にできていない」ところだけを見ると、失敗感。

でも、その下にあるのは……
「母の満たされない思いを満たしてあげたい。父が母にあげられなかったものを自分があげることができたなら、母は父を好きになってくれるのではないか――」という、子どもの愛なんです。

背負ってきたものを下ろしてもいい

「できていない」
「やるべきことをやっていない」
「本来ならなるべき姿に、なれていない……」
という思いの下にある、愛を発見したとき。

「背負ってきたものを、降ろしてもいいのかもしれない」と思えます。

だって。失敗じゃなかったのだから。
罪悪感だって、ぜんぜん持たなくてもよかったのだとわかるから――。

「本当なら、こうなっていなきゃいけないのに」という思いは、持たなくていいものだった。
「こうなってなきゃいけない」は、自分が本当にしたいことではなかったんだな。
手放していいのです。

家族を助けたい気持ち。
子どもはたくさん持っています。

もちろん、それらを持っていてもいいんです。
でも、「なんか、本当の自分を生きられていない気がする」のなら、背負ってきたものを降ろしてもいいんです。

だって、親が望んでいるのは、子どもが幸せであること。
子どもも、親に幸せになってほしいと思ってきた。

だとしたら
自分が幸せになることが、あなたの大事な人の幸せ――そんな世界観の中に生きることを選ぶこともできるんです。
あなたが助けたかった人も、あなたの幸せを望んでいるのですから。

いつも自分に言ってます。ふと忘れるたびに、言ってます。
「私が幸せになろう~」

一つ、またひとつ、役割としての男性性を降ろすたびに、自由になっていけるのです――。

ほんとうは女としての自分がいるのに、どこか男性的に生きているなと思うなら。
そして、このままでいいのかなという心の声がときどきしているのなら。
よかったら一度お話を聞かせてくださいね。

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この記事の執筆者
中村陽子/心理カウンセラー
中村陽子/心理カウンセラー
4500件以上の個人カウンセリングを行う。婚活がうまくいかない、片思い、異性とお付き合いしたことがない、出産タイムリミットへの焦りなど、女性の生き方のお悩み、人生やり直したい、何がやりたいのかわからないなど自己実現のお悩みを数多くお伺いしています。
私自身、30代後半に子どもがほしいと結婚し、39歳で離婚して、40代前半は諦め&人生迷子のどん底期を味わい、45歳から「50代、60代でも花開く人生」をつくりはじめて、今にいたります。 自分らしい生き方のお手伝いしています。
ツイッター@nakamurayoko70
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