「私だけ、結婚できない」の裏にある、親を置いていけない気持ち

中村陽子/心理カウンセラー

みんなは結婚して家族がいるけれど…

楽しいことなんて、何もない。
みんなはいいよね、恋愛して、結婚して、子どももいて。
だけど、自分には絶対手に入らないと思う。自分だけ、どんどん取り残されていく。
仕事だってつまらない。
私だけが取り残されて、一生ひとりで年を取っていくんだ。
私には、面白いことなんて何もない。何のために生きているのかわからない。

こんなお悩みをときどき伺います。
ほかのみんなが当たり前のようにしていること。自分だけは絶対に手に入らない。
一生ここで、何の面白いこともないまま年を取っていくんだ。
このお悩みを持っている方は、みなさんこうおっしゃいます。

このお悩みを伺うと、こう質問しています。
「もしかして、恋愛なんてこの世からなくなってしまえばいいって思っていませんか?」

実は、このお悩みをもつ方は、とても親想いの女性であることが多いんです。
自分ではそう思っていないかもしれません。
だけど、親を想う気持ちをとても持っているんですね。だからこそ、悩むんです。

この世界から恋愛なんてなくなってしまえばいいんだ。
だって、自分だけ恋愛から取り残されているから。
この世界から恋愛がなくなってくれたら、私、悩まなくてすむようになるのに。
こんな思いの背景に、「親をひとりにするわけにはいかない」という気持ちがあることが少なくないんです。

親を一人にするわけにはいかない

例えば。

  • 母一人子一人で、シングルマザーとして自分を育ててくれたお母さん。母は恋愛もせず、私を育てるためにずっと働いてくれていた。
  • アルコールに飲まれて酔っぱらっては暴言を吐くお父さんと、どうして結婚なんてしちゃったんだろうと嘆くお母さん。この家からもし自分が出ていくことになったら、二人はどうなってしまうんだろうと心配でならない。
  • 家に体の弱いお母さんがいる。お母さんの手助けを子どもの頃からずっとしてきた。親戚の叔母さんからはそろそろあなたも結婚を考える年齢でしょと言われるけれど、お母さんを残して家を出るわけにはいかない。
  • 家を出られず自立できないきょうだいがいる。親も大変だから。私がなんとかしなくては(ゆくゆくは面倒をみなくては)

なんらかの理由で、親を一人にするわけにはいかない、親を置いて家を出るわけにはいかない、自分だけラクになるわけにはいかないという気持ちを抱いていることが多いんです。

そこには、家族を想う気持ち、親を想う気持ちがあるんですね。

親を置いていけない自分と、ほんとは自分の人生生きたい自分

だけど、家を出るわけにはいかないと思っている自分のほかに、もう一人の自分もいるんです。

それは……
ほんとうは自分の人生を生きたい自分です。

家を出るわけにはいかない自分と、自分の人生を本当は生きたい自分。
ふたりの自分がいるようなところがあるんです。

「自分の望む人生を生きること」をどこかで諦めていませんか?

だけど、家から出るわけにはいかない。
だとしたら、この世界から、恋愛なんてなくなってしまえばいいのに――。
嘆いているのは、自分の人生を生きたい私なんです。

自分の人生を、生きるわけにはいかない。
もし心の奥で誓っているのなら、絶望だってするでしょう。
私はなんのために生きているんだろうって。

心のどこかで、諦めようとしていませんか。
好きな人と出会って、結婚して、家庭をつくることを。
もし、大好きな人と出会って結婚するようなことになってしまったら、家を出なくてはいけなくなる。
だから、好きな人と出会わないようにって。

私にはぜったい、恋愛なんてできない。
誰も私のことなんて好きになってなんてくれない。
私を好きになって結婚しようと思ってくれる人なんて、私には絶対現れない。
こう、思っていたりしませんか?
だけどこう思うことで、「恋愛するわけにはいかない」と自分に言い聞かせているのかもしれません。
無意識のうちに。

私はきっと、恋愛もしないで、結婚もしないで。
年を取っていくんだ。
この家から出ることなく、年を取っていくんだ。
こんな思いもあるかもしれません。
でもこう思うのって「家から出るわけにはいかない」と決めているからではないですか?

恋愛をすることもあります。
だけど
・片思い
・あいまいな関係
・付き合ってもすぐに別れてしまう
・既婚男性など、結婚に至らなさそうな恋愛や相手を好きになっている
ことが多いんです。

親にひどく八つ当たりしてしまうことも

親にケンカをふっかけたり、暴言を吐いてしまったりすることも、あるかもしれません。
そして「なんでこんなひどいこと、親に言っちゃうんだろう。自分ってひどいやつだ」と思ったりもする。

だけど、仕方がないところもあると思うんです。

親に当たりたくも、なりますよね。
「自分は、親を残して家を出るわけにはいかない」と自分のために生きることを必死に諦めようとしている分だけ、親に当たりたくもなりますよね。

「本当は好きな人と一緒になりたい」気持ちありませんか?

だけど。本当は、自分の人生を生きたい気持ちだってありませんか?
好きな人と出会って恋愛だってしたい。この人は自分の味方だとお互いに思い合えるような、そんな人がほしい。子どもだってほしいかもしれない。

自分の人生を生きたいという気持ちが出てくると、即座に
「私に結婚なんてできるわけない。
私を好きと思ってくれる人なんていない。
私だけは、恋愛なんてできないんだ」
という声が頭の中に聞こえてくるかもしれません。

だけど、これらの声は「本当は私だって、自分の人生を生きたい」という気持ちが表に出て来ないようにするために聞こえてきているのかも、しれないんです。
抵抗勢力の声、です。

親のために生きてきた私が、一歩を踏み出す

クライアントさんに、こんな方がいました。
実際にこんなプロセスを経て、「私はきっと一生家にいて、このまま年を取っていくんだ」という絶望をかかえていた場所から、一歩を踏み出した。
Mさんの軌跡です。
(書いてもいいですよと言っていただいたので、書かせていただきますね)

この世界から恋愛なんてなくなってしまえと思ってた

私のことなんて好きになってくれる人はいない
いいなと思える相手なんていない
いい人になんて出会えるわけがない
みんなは結婚できるけど私だけは結婚できないまま死んでいくんだ。
それが、彼女の口癖でした。

彼氏ができたこともありました。
初めての彼氏です。
だけど、彼は仕事と趣味に忙しい人で、彼との距離を縮めようにもうまくいかず「彼は私のことなんて好きじゃないんだ」としか思えませんでした。
彼が彼女のことを思って、プレゼントをくれてうれしい気持ちになることもありました。
だけどすぐに、「だけど彼は私のことなんて好きじゃないんだ。きっと私から離れていくんだ」という思いが浮かんできては、幸せな気持ちをかき消していたのです。
彼の転勤で、その恋愛は終わりました。

彼女は長女でした。
お父さんはお酒をものすごく飲む人で、彼女が子どものころからお父さんが家で暴言を吐いていたといいます。お父さんが暴言を吐いてはお母さんと激しいケンカになるという毎日だったそうなんです。

大人になってからも、そんな日常が続いていました。

彼女がカウンセリングで訴えてくるのは、「私はこのまま一生ひとりなんだ。私には結婚とかできず、このまま年を取っていくだけなんだ」というものでした。

彼氏できますよ、ぜんぜんできますよとカウンセラーが言っても
「私のことなんて誰も好きになってくれるわけないし、出会いなんてないし、そもそもいい人なんてどこにもいないし。だからずっとこのままなんです」と言っていました。

だけどそれは裏を返せば
「私はずっと結婚しないでこの家にいなくはいけない」
と彼女が思っているということだったんです。

幸せな恋愛をすること、結婚して家族をもつこと、楽しさを味わうこと
これらを全部諦めていました。
自分の人生を生きることを諦めていたんです。

だから、彼女の中の「女子の私」は絶望を訴えていたんです。
「会社と家を往復するだけで、楽しいことなんて何もない、生きていても仕方ない」って。

それはそうだと思いませんか?
30歳で、人生まだまだこれからいくらだってつくっていけるのに
「私はずっと結婚しないで、この家にいなくてはいけない」と、自分の人生を脇に置いているわけですから。

そんな彼女でしたが、あるときカウンセリングでこう言いました。

「私、今頑張らないと結婚できないって占いに書いてあった。
もう、この生活はいやだ。だから、私は彼氏を絶対つくると決めた」と。

この「決めた」は、とても大きな意味がありました。
絶対に彼氏をつくる、と彼女は決めたのです。

「自分の人生を諦める生き方。もう嫌だ、もううんざりだ」と心の底から思ったことで
変化すること、進むこと、彼氏をつくることを決めることができたのです。

決めることは、意志の力です。
決めることで、長い間停滞していたことも、動き始めるんですね。

決めたあとの彼女は、とてもがんばりました。
家を出るわけにはいかない、という気持ちとひとつひとつ向き合っていったのです。
諦めずに、何度も何度も。

カウンセリングで、自分の人生を生きていいのかもしれないと思っても、またすぐに「私だけは絶対に、幸せになんてなれないんだ」という気持ちに覆われてしまう。
そんなことを繰り返しながらも、諦めず何度も何度も、家を出るわけにはいかない気持ちとひとつひとつ向き合っていったのです。

彼女の中には、無力感でいっぱいの自分がいました。

お酒を飲んで暴れるお父さんをどうすることもできなかった、という無力感でいっぱいの自分がいたいんです。身動きが取れないまま、絶望を抱えていたんですね。

その自分に言ってもらいました。
「お父さんのアルコール依存をなんとかすることはできなかったかもしれない。助けたかったんだよね。だけど、よくやったよね、自分にできることは全部やったよね、ほんとうにこれまでよくやってきたよね」って。
無力感でいっぱいだった自分を抱きしめてもらったんですね。
きっと悔しさもたくさんあったに違いありません。

それでも、自分にできることは全部やった。
そうなんです。十分すぎるほど、家族のために自分にできることは全部やった。
それをインナーチャイルドに伝えていきました。

それから何週間か経った頃。
家を出たい、一人暮らしをしたい。
そんな気持ちが出てきたといいます。

そこで。
心の中でお母さん(家)との間に、境界線を引いてもらいました。

それから1カ月もしないうちに、彼女は一人暮らしの家を決めました。
けれど、彼女が家を出ようとしたとき「出ていくなんてひどい」とお母さんからは言われたそうです。

自分の人生を生きるために、親から離れること。それは悪いことではありません。

反抗期ってありますよね。
それは、子どもが親から離れるための時期なんです。
親のことをいったん嫌いになって、離れる。自立していくために必要なプロセスなんです。

だから、親から離れることは決して悪いことではない。
離れることは、大人になるうえで当たり前のことなんです。

けれど。
親と子のくっついた関係である癒着を切ろうとするとき、痛みが出てきます。

癒着関係にあるとき、親のほうから「あなたも大人になったんだから、自由に生きなさい」とはなかなか言ってもらえないんですね。そういうものなんです。

だからこそ子どものほうから癒着を手放していく必要があるんです。
つらいけど。悪いことしてるような気持ちも、すごくしてくるけど。
だけどこれは、必要なプロセスなんです。

一人暮らしを始めようとすると「一人暮らしなんてしなくてもいいじゃない」「お母さんを置いていくつもり?」「なんで冷たい子なの」と、言われることもあります。

これは、癒着を切ろうとするときに出てくる痛みなんです。
癒着を切られる側から、「離れないで」という痛みが出てくるんです。

切るほうは、悪いことしてるんじゃないかという気持ちがすごく出てきます。
だけど、この痛みを超えていくことが、癒着を切っていくうえで必要なんですね。
ひとりでは、なかなか超えられないかもしれない。
そんなときは第三者に、この痛みを超えるためのサポートを求めてみてください。
ひとりでは抱えきれない、自分は悪いことしてるんじゃないかという気持ち。
それを、誰かに一緒に持ってもらうんです。

そして、彼女は一人暮らしを始めました。
家から出るわけにはいかないとずっと思い続けてきた彼女が、大きな一歩を踏み出したのです。

だけど。
実家から出たあと、もうひと波ありました。

「家から出て一人暮らしをしたけど、結局何もかわらない。
私のことなんて誰も好きになってくれるわけないし、出会いなんてないし、そもそもいい人なんてどこにもいない。家にいても、一人暮らしをしても何も変わらない。しんどい気持ちは変わらない」という気持ちに襲われたんですね。

癒着を切って、親と離れますよね。
癒着とは、親と子がくっ付いている状態。そこをバリバリバリって剥がすことになるんですね。
だから癒着を切った罪悪感に、あとから襲われることもあるんです。

癒着を切った相手に、罪悪感が出てくるとしたら
自分が助けなくてはいけなかったのに、見捨ててしまったような思いなんですね。
そのくらい、親を想う気持ちがあるということ。

罪悪感を感じるのは、愛があるからなんです。
罪悪感と同じ分量だけの、相手を想う愛があるんです。
だから、罪悪感ではなくて自分の中の愛のほうを見る。
自分はなんてひどいんだと感じるかもしれない。でも、親を想う気持ちがあるからこその、痛みなんです。

この罪悪感を超えるときのひとつの視点があります。
信頼するということ。

お父さんにはお父さんで、自分のことを何とかする力がある。
お母さんにはお母さんで、自分のことを何とかする力がある。
そこを信頼するんです。

もうひとつ。
できることと、できないことを切り分ける。
親を助けたくても、自分が何かをすることはできません。
できることと、できないことがあるんです。
これはできること。これはできないこと。
そうやって線を引いて、できること、できないことをしっかり区別していくのも大事なんですね。

一人暮らしを始める前。
彼女は
「この街には、男がいないんです。
おじさんと既婚者と子どもしかいなくって。
この街には独身の男性なんて、いないんですよ」
とよく言っていました。

え? ほんと???と聞くたびに
「私の住んでいる街には、男がいないんです!」と力強く答えてくれていました。

そんな彼女でしたが、半年も経たないうちに「彼氏ができました」という報告が届きました。

自分の人生を生きていい

親想いゆえに、親を置いて自分だけ幸せになるわけにはいかないという思いを持った人が、
「自分の人生を生きていい」
「自分の人生を生きて幸せになっていい」
「私もパートナーがほしい」と自分の未来に向かい始めると
引き戻されるような思いが出てきて、「ぜんぜんうまくいかない」と思うことも出てくるかもしれません。

だけど、きっとうまくいきます。
いまどんなふうに見えようとも、最終的にはうまくいく。
そう信じることが、大事なんです。

うまくいくほうに、信頼のパワーを使うこと。
ぜったいぜったい悪い結果になる、というほうに信頼のパワーを注ぐこともできます。
うまくいく、きっとうまくはずというほうに信頼のパワーを注ぐこともできます。
うまくいくほうに信頼のパワーを注いだ方が、うまくいく方向に向かっていけるのおわかりですよね。

もちろん、一人でやらなくてもいいんです。
人間ですから、山あり谷あり、気持ちがアップダウンするものです。それがふつうです。
そんな中、自分一人で「うまくいく、うまくいく」って信じ続けられる人は、よほど意志の強い人かもしれません。

自分一人では、うまくいく未来を信頼し続けることができないなら。
誰かの力を借りればいいんです。
「だめだ、やっぱり私にはムリだ」という気持ちになること、ありますよね。
そんなときは、自分の代わりに「大丈夫。きっとうまくいくから大丈夫」とほしい未来を信じ続けてくれる人の手を借りればいいんです。

あなたは幸せになっていい。
自分の人生、生きていい。
ほしい未来を望んでいい。
自分の人生、生きていい。

いつでもお手伝いします。
よかったら、いつでも声をかけてくださいね。

あなたがほんとうはほしい未来、ほんとうはしたい生き方に向かって、一歩を踏み出せますように。

Mさんのその後のストーリーです。
→結婚する人とは、とんとん拍子にうまくいく

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この記事の執筆者
中村陽子/心理カウンセラー
中村陽子/心理カウンセラー
4500件以上の個人カウンセリングを行う。婚活がうまくいかない、片思い、異性とお付き合いしたことがない、出産タイムリミットへの焦りなど、女性の生き方のお悩み、人生やり直したい、何がやりたいのかわからないなど自己実現のお悩みを数多くお伺いしています。
私自身、30代後半に子どもがほしいと結婚し、39歳で離婚して、40代前半は諦め&人生迷子のどん底期を味わい、45歳から「50代、60代でも花開く人生」をつくりはじめて、今にいたります。 自分らしい生き方のお手伝いしています。
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