恋愛心理学

母親から父親の愚痴を聞いて育った人の恋愛がうまくいかない理由

中村陽子/心理カウンセラー

恋愛が続かない、婚活してもお付き合いが始まらない、婚活がとても苦痛……。
そんなお悩みを聞いている中で、よく出てくるのが「母親から、父親の愚痴をよく聞かされていた」という話です。

父親の愚痴をよく聞かされた。そのことが、恋愛や結婚に少なからず影響を与えることがあるようです。

子どものころ「うちのお父さんは」と愚痴を聞いて育った

子どものころに、母親から父親の愚痴を聞かされて育った。
そんな体験を持つ人は少なくありません。

「お父さんとなんて、結婚するんじゃなかった。こんな人だとは思わなかった。
結婚する前からこんな人だとわかっていれば、結婚しなかったのに。
うちのお父さんは、ほんとにひどい。
お父さんとさえ結婚しなければ、私はこんなに苦労しなくて済んだのに」

「お父さんは冷たい人。何もやってくれない。
家のことはすべて私に任せっきりで、何もやってくれない。頼りにならない。
どうしてこんなに冷たい人と、結婚なんてしたんだろう。
お父さんとなんて結婚しなければよかった」

「うちのお父さんはほんとに頼りない。肝心な時にぜんぜん役に立たない。
お給料だって上がらない。お父さんのお給料だけじゃやっていけないのよ。
もっと違う人だっていたはずなのに、うちのお父さんとなんて結婚するんじゃなかった」

お父さんについての愚痴を母親からよく聞いていた。
言っている親自身は、深刻に話しているつもりはなかったとしても、言われた側の子どもは、とても深刻に受け止めてしまうことが少なくないんですね。
父親についての愚痴の内容を子どもなりに重く受け止め、「なんとかしなくては」と感じてしまうんです。

そして、こんなふうに思ったりします。
「お父さんはあてにならない。お母さんばっかりかわいそう」
「お母さんが大変そう。大変なお母さんのそばにいてあげなくては。大変なお母さんを助けてあげなくては。お父さんはほんとに役に立たない」

そして気づくと「お母さん側」に立って、お父さんを嫌いになったり、お父さんをダメな人と思ったりするようになること、少なくないんです。

「お母さんがかわいそう」とお母さん側に立つように

「お母さんがかわいそう」
そう思った娘は、お母さんを助けるためにお母さんに寄り添い、お母さんの愚痴の聞き役になります。

どうしたらお母さんを助けることができるんだろう、お母さんを笑顔にすることができるんだろう。そう思って子どもなりに、親を助けようとします。

例えば子ども時代に、お母さんが望んでいそうなこととして「勉強をがんばること」をするかもしれません。だけど、勉強をがんばってもお母さんが抱えている葛藤の根本的な解決にはならないので、お母さんはあいかわらず大変そうだったり、不満をかかえてヒステリーになったりします。
その結果、子どもは「自分が何かやっても無駄なんだ。自分は無力なんだ」といった感覚を抱え込んでしまうこともあるんですね。

また「子どもの頃、お母さんの手伝いをぜんぜんしなかった。ただでさえお母さんは大変そうだったのに。私が何もしてあげなくて、お母さんに悪いことをした」という罪悪感を持ってしまうこともあります。母が愚痴を言ったり、ヒステリーぎみに大変そうだったりしているのを見ながら「自分のせいなんじゃないか」と感じてしまったりするんですね。

「お父さんはぜんぜん頼りにならない」という愚痴を聞いていたことで、父親に代わって自分が男役を引き受けようとすることも。お母さんの望みを叶えるために、並の男よりも男前な女子になっていくこともあるんですね。たとえば「お父さんは稼ぎが少ない」と聞いていたなら、「自分がお金を稼げるようになって、お母さんを満足させなくては」と思うわけです。(といってたくさん稼げるようになるわけでもない。そうなると「稼げない自分ってだめだ」という気持ちも、抱え込んでしまうんですね)

さらに、場合によっては「自分さえ生まれて来なければ、お母さんはお父さんと結婚することはなかった。自分さえ生まれていなければ、お母さんは幸せになれたのかもしれない」と、思ってしまうこともあります。

大人になってから「実家から離れることがなかなかできない」こともよく起こります。「お母さんをひとりにしてしまったら、かわいそう」という思いが心の奥にあって、自分は実家から離れるわけにはいかないと思ってしまうのです。
(実家暮らしのシングル女性は、「いい歳をして、まだ実家にいるなんて。自分はどうしてちゃんと自立できないんだろう」と自分を責める気持ちを持っているかもしれません。でも、自立できないわけではなくて、「親のために離れるわけにはいかない」と思っているのかもしれません)

お父さんのせいで、お母さんがかわいそう

お母さんがかわいそうと思った娘は、お父さんを敵扱いしてしまうこともあります。
「お父さんのせいで、お母さんが幸せじゃないんだ」と思ってしまうのです。
そして「男なんてあてにならない」「男は頼りない」「男なんてろくなもんじゃない」といった男性像を持ってしまったりするんですね。

もしお母さんが、「お父さんはぜんぜん頼りにならない」と愚痴を言っていたなら、「お父さんって頼りにならないんだ」と子どもは思います。そして、それが「自分の男性像の原型」にもなるんです。

というのも、父親が男性像の原型になるからです。
「うちのお父さんはだらしない」と聞いて育った人は「男の人ってだらしない」と感じやすくなります。お父さんの浮気で苦労したのを見て育った人は、「男の人は浮気をするもの」という観念を持ちやすくなります。「お父さんは家のことを何も考えてくれない」と聞いて育った人は、「男性は家のことを何もしない。結婚したら女ばかり家のことをしなきゃいけなくて損をする」と思うかもしれません。

お母さんから聞かされた愚痴によって、「お父さんってこんな人」という思うようになるわけですが、それが男性を見るときに影響を与えているんですね。

お父さんに×印をつけているところ、ありますよね。
例えば「お父さんって頼りない」と思っていたら、「男って頼りないフィルター」で相手を見ます。そして世の中の男性のほとんどが「頼りない男ばっかりじゃないか!」と見えるわけです。その結果、周りにいる男性たちを頼りなく感じてしまって(仕事でも恋愛でも)、「頼れる男なんていない」とばかりにどんどん自分が強くなり、付き合った彼をどんどん頼りない男性化してしまい、「どうして私ばっかり、こんなに背負わなきゃいけないの!」とテーブルをひっくり返したくなってしまったり。
逆に「頼れる男性じゃないと嫌なのよね」との視点で男性を探そうとするものの「お眼鏡にかなう男性、ぜんぜん棲息していない!」ということになってしまったり。

例えば「大事なときに、お父さんは家の中の問題に向き合わずに逃げていた」という×印をつけていたら、「女ばっかりが家のことをひとりで抱え込まなくてはいけない」と思い、結婚したほうがいいんじゃないかと思いながらも、無意識的に結婚を敬遠してしまい、「婚活してもぜんぜん男性をいいと思えない自分って、おかしいんだろうか」という悩みを抱えてしまったり。

例えば「お父さんはお酒を飲んでは暴言を吐いていた」という×印をつけて、お母さん側についてお父さんと戦っていたとしたら、お父さんを攻撃している自分のことをお父さんが好きなわけがないと思い、たとえ彼氏ができても「自分が彼から好かれていると思えない」と男性からの愛情を感じられない(受け取れない)ことで悩んでしまったり。

お父さんにつけた×印による悩みを抱えてしまいやすいんですね。

お父さんに×印をつけお母さんの味方になっていると、お父さんとの間に「心の距離」ができていたりもします。だけど、心の奥では「ほんとうはお父さんのことを嫌いたいわけじゃない」という気持ちもある。そのため「お父さんのことを嫌って、やさしくできていない自分」をどこかで嫌っている。そんなことも深層心理的にはあるんですね。

ほんとはお父さんのこと、嫌いになりたいわけじゃない

もし、恋愛がなんかうまくいかなかったり、仕事でも男性との関係がなんかうまくいかないという悩みを抱えているなら。

お父さんのこと、ほんとうは嫌いたいわけじゃない自分を呼び覚ましていくといいんです。
つまりは、ほんとうはお父さんのことが好きな自分を思い出していけるといいんですね。

どんなにお父さんのことを嫌っていても、よくよく話を聞いていくと「お父さんのことが好きな自分」「お父さんのことを助けたい自分」がいることは、とても多いんです。

「あんな父のこと、好きなわけがない」「あんなにお母さんに苦労をかけたお父さんなんて、迷惑なだけだ」「あんなに頼りない父のどこがいいの」という気持ちがある一方で、お父さんの孤独も知っているし、そんなお父さんを助けたい気持ちがあったりするんです。

あんなお父さん、嫌い。
こう思っていると、お父さんからの愛を感じることができないんですね。
お父さんからの愛を感じることができないと、恋人があなたに向けてくれている愛情を感じにくくなってしまうんですね。そのため、お付き合いをしていても「彼は私のこと好きじゃないんだ」と思ってしまうため、彼の行動をいちいち「私のこと好きじゃないから、彼はこんなことをするんだ」と感じてしまい、せっかく付き合っていても恋愛がうまくいかずに別れてしまったり、気になる男性がいても遠くから見ているだけで自分のほうからは近づけなかったりしてしまうんですね。

また、お父さんとの間の心の距離が遠いと男性とちゃんとしたお付き合いにならないにならないことが続いてしまったり、付き合っても遠距離やハードワーカーの彼だったり、片思いを長い間していたりということもあるんですね。

お父さんの×印をはずしていく

お父さんとの関係性のメガネを通して、彼を見てしまうのだとしたら。
お父さんにつけた×印をはずしたほうが、彼を彼そのものとして見ることができるし、彼からの愛や彼がこちらを想ってくれている気持ちにも気づきやすくなります。「彼は私を好きじゃないんじゃないか」という不安から抜け出しやすくなるのです。

じゃあ、どうやって×印をはずしていけるのかというと……。
お父さんのお父さんなりの愛情を見つけていくことなんです。

え? お父さん嫌いだし、無理なんですけどって思いますよね。
ぜんぜん、問題ありません!

第一段階は、自分の心の中にあるお父さんへの文句をいっぱい吐き出して、心にスペースを作ることから始めてみるといいんです。
そして、お父さんに×印をつけているところについて、「お父さんはどうして、ああだったんだろう」ということを考えてみるといいんですね。このとき、子どもの立場から親を見るのではなく、いまの大人の自分だからこそわかることもあると思いながら、考えてみるといいんですね。

そして、お父さんがこちらに向けてくれていたお父さんなりの愛情を見つけていく。

そんなステップを踏んでいくといいんですね。

お母さんの愚痴を聞いてお母さんの味方になってきたあなたは、とても心やさしい女性なんです。お父さんのことを頼りない、嫌いと思ってきたのはお母さんを助けたい気持ちがあったから、なんです。
とても心やさしい女性なんです。

自分では自分の心の中って、よくわからないものなんです。
お母さんの味方になってきた分だけ、お父さんのことを嫌ってきたのかもしれないと聞いても、すぐにはピンと来ないかもしれません。
それでも、ほんとうはお父さんのことを嫌いたいわけじゃない――。

自分では見えない自分の気持ちを、一緒に紐といてみませんか?
もしよかったら、一度お話を聞かせてくださいね。

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この記事の執筆者
中村陽子/心理カウンセラー
中村陽子/心理カウンセラー
4500件以上の個人カウンセリングを行う。婚活がうまくいかない、片思い、異性とお付き合いしたことがない、出産タイムリミットへの焦りなど、女性の生き方のお悩み、人生やり直したい、何がやりたいのかわからないなど自己実現のお悩みを数多くお伺いしています。
私自身、30代後半に子どもがほしいと結婚し、39歳で離婚して、40代前半は諦め&人生迷子のどん底期を味わい、45歳から「50代、60代でも花開く人生」をつくりはじめて、今にいたります。 自分らしい生き方のお手伝いしています。
ツイッター@nakamurayoko70
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