子どもどうする?

子ども好きだけど、ほしくない。無意識で「子どもと結婚」を遠ざける理由

中村陽子/心理カウンセラー

子どもはとても好きなんです。だけど私、子どもほしくないんです。
こんな声を聞くことがあります。
シングル女性でも、結婚している女性でも。

シングル女性で「子どもが好きなのに、ほしいと思わないんです」と思っていると、それが結婚を遠ざける理由に(もちろん、無意識ですよ!)になっていることも多いんです。
また、既婚で不妊に悩んでいる方にも無意識に「子どもほしくない」というマインドがあることも、少なくありません。

人の心は、ふだん意識できる「顕在意識」のほか、思い出そうと思えばそういうことあったなと思い出せる「潜在意識」、思い出そうにもぜんぜんわからない「無意識」という領域があります。

顕在意識では、子ども好き、子どもほしい、結婚したい、パートナーほしいと思っていても、潜在意識や無意識でほしいものを遠ざける意識(子どもほしくない、結婚するわけにはいかない、母になりたくないなど)があると、「ほしいのに、手に入らない」という現実を引き寄せることになります。

そのくらい潜在意識や無意識の力って大きいんですね。

子どもほしくないかもしれない。その気持ちが結婚を遠ざける

子どもが好き、子どもがほしいという気持ちがあるのに、潜在意識や無意識に「子どもほしくない」という気持ちがあることで、結果として、結婚から遠ざかっていることはよくあるんですね。

ま、私自身がそのタイプでしたから。
30代後半から40代前半にかけて、あんなに子どもほしいと思ってたのに。
よし、子どもをつくるぞと思ったとたんに、10年付き合っていた彼との関係をぶち壊したり……。自分でもよくわからない現象が起こっておりました。涙

パートナーほしい、子どもだってほしい。
そう思いながらも、無意識的に子どもを持つことを避けるマインドがあるために、結果として恋愛から遠ざかったり、片思いばかりをしていたりして、「どうして私は好きな人と付き合えないんだろう」という悩みになっていることもあります。
場合によっては、この人いいなと思う男性がそばにいてうまくいきそうな雰囲気があるのに、そのお相手を避けようとする心理が働いていることもあるんです。

既婚女性で、不妊治療をしている方とお話をしていても、女性本人か、ダンナさんのほうが無意識的な「子どもほしくない」を持っていると感じることは、けっこうあるんですね。

潜在意識や無意識にある「子どもほしくない」というマインドが書き変わることで、恋愛がスムーズにいくようになったり、場合によっては妊娠したりということも実はあるんです。

子ども、できにくいかもしれない

じゃあ、潜在意識や無意識にある「子どもほしくない」ってどういうものなのか。

事例としてお話したほうがわかりやすいと思うので、今回はある方のお話をさせていただきますね。
(ご本人に許可をいただいています。ありがとうございます)

40歳シングル女性のA子さんがカウンセリングに来られたのは、恋愛の悩みからでした。
好きな彼がいるものの、友達でいたほうがいいんじゃないかと悩んでいる。そんなお悩みでした。

よくよく話を聞いていくと、こんな言葉が出てきたんです。
「40歳になったときから、パートナーがいないことへの焦りが出てきた。この焦りがけっこうしんどくて、どうすればいいんだろうって思うんです。だけど、子どもができないかもしれない女性を選んでくれる人なんて、いるのかなとも思って」

まだ40歳だし、子どもができないかもしれないって思う必要ないんじゃないですか?というと、こんな答えが返ってきました。

「私、卵子の数がかなり少ない体質らしいんです。昔、病院の先生からは子どもがほしいなら早く妊娠したほうがいいよと言われてたんです」

お医者さんからは「子どもができないわけじゃ、ぜんぜんないよ」とも言われていたそうですが、A子さんの中では「私は子どもが出来にくいんだ」と思うようになっていたんですね。

A子さんにさらに話を聞いていくと、過去の恋愛についてこんな話をしてくれました。

「30歳くらいのときに付き合っていた彼がいて。その彼とは結婚を考えていたんです。だけどいざ結婚しようと言われたとき、『なんとなく違うな』と思って別れたんですよね」

子どもがほしくない気持ちを潜在的に持っていると、「いざ結婚しようとなったとき『この人じゃないな』と思って別れた」とか「同棲してたんだけど。そろそろ彼との子どもをつくろうと思ったとたんに、自分にほかに男性ができて別れた」とか。
関係性を終わらせるような行動をとってしまうことがあります。

また、結婚に至らなさそうなお付き合いばかり~たとえば既婚者の彼、片思いの彼、経済力がぜんぜんない彼、僕は結婚は考えてないと最初から言う彼、超遠距離の彼~していることも、多いんですね。

A子さんの恋愛も、30歳のときの彼と別れてからは、結婚につながらなさそうな男性と付き合ってきたといいます。

子ども持てないかもと思いながらも、卵子凍結

そんなA子さんですが、30代後半に卵子凍結をしたといいます。
「そのとき卵巣の具合を検査してみたら、自分が思っていたほどは、卵子の状態もぜんぜん悪くなかったんですよね」

「自分は子どもを産めないかもしれない」とか、「自分の子どもはつくらないと思う」というシングル女性に話を聞くと、「だけど、卵子凍結はしているんです」という話をされることは少なくありません。

このことが何を意味しているかというと。
私は子どもを産まない、子どもを持たないかもしれないと思っている一方で、「子どもがほしい、子どもを持ちたい、母になりたい」という気持ちも持っているということなんです。

私は子どもを持たないかもしれない気持ちと
だけど本当は子どもがほしい、母になりたいという気持ち。
相反する2つの思いを心の中に抱えている、ということなんです。

相反する2つの気持ちがあるからこそ、しんどい。
だって、進みたくても気持ちが2つに分かれてしまっているので、進めない。
それが、しんどいんですね。

カウンセリングで話を少しずつ深めていくうちに、A子さんは言いました。
「私、子どもを産めないわけではないはずなのに。どうしてこんなにまで『私には子どもを持てない』って、思ってきたんでしょうね」

どうも産むとか産まないとか、母になるとかならないとか。
そのあたりに、何かがあるのかもしれませんね。
そういって、さらに話を深めていきました。

妊娠、出産、子どもを持つことへの怖れ

A子さんはこれまで、自分の将来をイメージしようとしても、「結婚してもうまくやっていけるかわからない」という気持ちが出てきていたといいます。

ほんとうにほしいものに近づこうとするとき、「だけど、うまくいくはずない」とか「うまくいくかどうかわからない」という気持ちって出てくるものなんです。
それはまるで、ほんとうにほしいものを手に入れさせないために出てくるとも言えるかもしれません。

カウンセリングで少しずつ、自分の気持ちをひも解いていくうちに、A子さんは本当はほしい未来像を語り始めました。

「いつも一緒に楽しくワイワイ、家族4人でいられたらいいな。子どもがいるとしたら、男の子と女の子と一人ずつ。毎日子どものことに追われて忙しいながらも、時間をつくってダンナさんとデートもする。そんなカップルになりたいな」

A子さんの中に、ほしい家族のイメージはちゃんとあったんですね。
だけど、ほしい家族のイメージをずっと抑え込んできたんです。
自分には、そんな願望なんてないかのように。

どうして子どもをそんなに持ちたくないんでしょう?
そう質問してみると、A子さんはふとこんなことを口にしました。

「そういえば……。昔から、出産のシーンに怖いイメージがあるんです。痛いとか、出血多量になっちゃうんじゃないかとか。出産って怖いものだから。絶対子どもを産んではいけないって。最初に思ったのは、中学生くらいのときかな」

実は、子どもがほしい気持ちとほしくない気持ちの両方を持っているとき。
「出産についてのよくわからない怖いイメージ」とか
「もし自分が子どもを産んだら、変な子が生まれてしまう夢を見たことがある」など
妊娠、出産、子どもを持つことへの怖いイメージや、正体不明のよくわからない感覚を持っていることって、少なくないんですね。

A子さんが子どもを産めないと言われたわけではないのに「自分は子どもができないかもしれない」と思い込んだり、結婚へと順調に進んでいきそうになると彼との関係を終わらせたり、結婚できにくい既婚男性などの付き合ったりしていたのは、「子どもを産むのが怖い=子どもにまつわる怖れ」が無意識にあったからだったんですね。

そこでこの「出産についての怖いイメージ」を掘り下げていきました。
すると、こんなことがわかってきたのです。

子どもや出産にまつわる、正体不明の感覚

出産や子どもを持つことについての怖いイメージや、自分は子どもを産まないだろうという漠然としたイメージを若いころから持っていた場合。
たとえば「小学校の頃に、出産の怖い夢を見たことがある」など、若いころから持っていた場合。

その怖いイメージは、自分になんらかの体験があって持つようになったのではなく、親から引き継がれたものであることが少なくないんですね。

そこで、A子さんの家族関係について話を聞いていきました。

すると、こんなお話になったんです。
「実は私が生まれる前にお姉ちゃんがいたんですが。2歳の時に病気で亡くなってしまったんです。私はお姉ちゃんが亡くなったあとに、妊娠して生まれた子どもなんです」

A子さんの幼いお姉ちゃんが亡くなったあと、A子さんのお母さんは悲しみに暮れていたそうです。そんなお母さんのもとに、A子さんはお母さんのお腹の中にやってきたわけです。

A子さんを妊娠中のお母さんを想像してみます。
お母さんはどんな気持ちだったろう。

幼子を亡くしたばかりのお母さんは、子どもが来てくれた喜びと同時に、もしかしたら「お腹のこの子も、幼くして亡くなってしまったりしないだろうか」「あの子と同じことがもしも起こったらどうしよう」。そんなことを思っていたかもしれません。

子どもが病気を持っているとき、特に母親は「この子が病気になったのは、私がちゃんと産んであげられなかったからだ」と思ったりするんです。お腹の中にA子さんが宿っていたときに「ちゃんと産んであげること、できるだろうか」「もしまた私のせいで、病気なってしまったりしないだろうか」といった怖れの気持ちを抱いていたかもしれません。

他のケースでも、例えばお母さんが出産について怖いイメージを持っていて子どもをお腹に宿しているときに怖れの気持ちを感じることがあったなど、なんらかのことがあって、自分がお母さんのお腹にいたときに「子どもをもつことの怖れ」をお腹の中で感じていた。
そんなことも、あるかもしれないんですね。

出産にまつわるその怖いイメージ。
自分でもなんだかよくわからない怖いイメージ。
それは、A子さんがお母さんのお腹の中にいたときにお母さんが感じていたものかもしれませんね。
出産が怖い。その漠然としたイメージがあったから、自分は子どもができにくいんじゃないかと思ってきたのかもしれませんね。

そんな話をしていくと、A子さんはいいました。
「出産についての怖いイメージ、お母さんのものだったかもしれないと言われたら、私、なんでこんなにも子どもが出来にくいって思い込んでいたんだろうって気持ちになってきました。お医者さんから『子どもができないとか、できにくい』と言われたわけじゃなかったんです。早く子どもをつくったほうがいいよって言われてただけだったんですよね」

子どもを持つことの怖れ、しかも自分では正体不明のよくわからない怖れ。
この怖れは自分のものではなかったんだ。そう思ったとき、A子さんが抱えてきた怖れを手放すことができたのです。

「私、子どもがすぐできちゃう気がしてきました」

そういってA子さんは、彼女の好きな彼に向かって歩き始めました。

無意識のブロックは、気づけば手放せる

自分には子ども、できないかもしれない。
子どもほしいと思ったことがない。
子どもは好きだけど、自分の子どもはつくらないと思う。
子どもほしいのに、なぜか子どもを持てない。
こんな思いを持っている人の中に、「出産や子どもを持つことの怖れのイメージ」「正体不明のよくわからない怖いイメージ」を持っていること、少なくないんです。
(もちろん、すべての人にあるものではありません。人により、無意識にあるブロックはいろいろ異なります)

このイメージは無意識の中にあるものなので、「子どもの頃に見た夢」として出てきたり、「なんとなく、ふとそんなふうに思った」というものだったりするんですが。

無意識にある感覚は、自分では捕まえたくても捕まえられないものなのですが。
「あ、こんな感覚があった」「あ、こんなふうに思ってたんだ」が意識化できると、そのブロックを外していくことって、できたりするんですね。

すると「あれ? 今までずっと、どうしてこんなふうに思ってたんだろう」となることも、けっこうあるんです。

自分では気づかない無意識にあるマインドを手放せたとき、「ほしい未来」に向かって一歩を踏み出し始めることができるんです。

40歳の焦りが教えてくれるもの


40歳の焦りが教えてくれること。
それは「子どもを産むならラストチャンス」という体からのサイン。
この焦りの気持ちは、自分がいままで向き合うことを遠ざけてきた気持ちに向き合うきっかけを与えてくれます。そして、向き合うことで心のブロックを外して「心の奥にある本当の願い」とつながることもできるのです。

子どもについて、女性として生きることについて。
これまでたくさん諦めてきた何かをお持ちのこともあるかもしれません。
だけど、心の中の自分の願い。心の中のほんとうの気持ち。
それらを取り戻すこともできるんです。

子ども、ほしいのかほしくないのか。自分ではわからない。
わからないけど、なんか心の奥がもやもやする。

もしそんな気持ちがあるのなら。
自分の気持ちに納得をするためにも、
ぜひ一度お話を聞かせてくださいね。

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この記事の執筆者
中村陽子/心理カウンセラー
中村陽子/心理カウンセラー
4500件以上の個人カウンセリングを行う。婚活がうまくいかない、片思い、異性とお付き合いしたことがない、出産タイムリミットへの焦りなど、女性の生き方のお悩み、人生やり直したい、何がやりたいのかわからないなど自己実現のお悩みを数多くお伺いしています。 30代後半に子どもがほしいと結婚し、39歳で離婚して、40代前半は諦め&人生迷子のどん底期を味わい、45歳から「50代、60代でも花開く人生」をつくりはじめて、今にいたります。 自分らしい生き方のお手伝いしています。 ツイッター@nakamurayoko70
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