恋愛心理学

お父さんを嫌いになっちゃった私にパートナーができるまで

中村陽子/心理カウンセラー

ひとりで生きなきゃと思ったのにはワケがある

シングル女性から、ときどきこんな声を聞くことがあります。

ひとりで生きていくために、頑張ってるわけじゃない。
ひとりで立っていけるようにと思って、生きてきたけど。
これ、私がほしかったものじゃない。

仕事はそこそこ順調で、必要ともされているけれど。
私、何のために頑張るんだっけ。
これ以上、何のために頑張るんだっけ。

ひとりで生きていけるようになったけど。
これを、望んでいたわけじゃない。

そんな心のつぶやきです。
なんかわかる~。そう感じる方も、かなりいるのではないでしょうか。

ひとりで生きていけるようにならなきゃ。
自分の足で立っていけるようにならなきゃ。
こう思うようになったのには、なにか理由があるものなんです。

子どもの頃や思春期に、なんらかの事情があって「ひとりで生きていけるようにならなきゃ」と思った。
大失恋や離婚したとき、「ひとりで生きていけるようにならなきゃ」と思った。
自分は結婚できないだろうと不思議なんだけど思っていたから、「ひとりで生きていけるようにならなきゃ」と思った。

なんらかのハートブレイク(心を痛める出来事)があって
「自分の足で立っていけるようにならなきゃ」と思った。

結婚や家族をつくること、子どもを持つことに何らかの負のイメージがあって
「(もしかしたら結婚しないかもしれないから)自分の足で立っていけるようにならなきゃ」と思った。

だけど「こうしたい」が動機ではないんです。
「こうしなきゃ」なんです。

「したい」というより、「しなきゃ」なんです。

心を痛めた出来事や、結婚や家族に対しての負のイメージがあるために
「しなきゃ」と思った。

だけど、それってしたいことなの?と聞かれたら
ん? あれ? 当たり前のように「しなきゃ」と思ってやってきたけど。
したいことなのか。自分でもわからない……。

自分はほんとうは何を望んでいるんだろう。
ほんとうはどう生きたいんだろう。
考えたことも、なかった――。

がんばってきた人ほど、こんな悩みを抱えているのかもしれません。

恋愛の始まりで、いつも自爆してしまう

自分は何のために、ひとりで立っていけるようにって頑張ってきたんだろう。
だけど、ひとりで生きたかったわけじゃない。
そう気づいて、カウンセリングを受けたYさん。

ほんとは何がほしかったのか。
どうしてほしいものから遠ざかっていたのか。
Yさんの物語をご紹介します。
(ご本人に書いていいですよと言っていただいたお話を、少し変えて書いています)

いいなと思う彼と出会っても、恋愛がうまく進まない。
話もあうし、一緒にいると楽しいし、また会いたいと思うのに。
2、3回会ったところで「私と付き合いたいの? 付き合いたくないの? どっちか言って」と詰めてしまい、関係を自分で壊してしまう。

いつも、このパターン。
いつもここで自爆してるなって思う。
不安定な自分が出てきて、関係を壊しちゃう。

いつから恋愛の仕方がわからなくなっちゃったんだろう――。
そんな悩みを抱えていたYさん。

恋愛のはじまりで、いつもつまづいてしまう。
もし、そんなことが続いているとしたら。
「恋愛を始めたくない理由」があるのかもしれません。

恋愛を始めたくない理由。
好きな男性との距離を縮めたくない理由。
そもそも好きな彼をつくりたくない理由。

なんらかの理由が心の中にあったりするんです。

Yさんの恋愛が、いつも始まりで自爆していた理由。
それは「誰かを大好きになること」を怖がっていたからだったのです。

よくよく話を聞いていくと、「昔、大好きな人と別れなくてはいけなかった」という心の痛みがあったんです。

大好きだった人と別れた心の痛み

「20代の終わりごろに付き合っていた彼がいました。
彼のことが大好きだったんです。

付き合っていたころ、彼は精神的にダウンしてしまって、仕事を辞めた時期がありました。
私は、そんなのぜんぜん気にしてなかった。
彼が元気になるまで、待っているつもりだったんです。
だけど、彼は「君を待たせておけないから別れたい」って。

自分にはどうにもならない理由で別れなくてはいけなかったことが、とにかくつらかったんです。
彼のこと好きだから。彼の負担になるなら別れたほうがいいのかなと身を引いたけど。
かなり長い間、私は立ち直れなかった。

それからかもしれません。
恋愛の仕方が、わからなくなっちゃったのは」

この彼との別れは、Yさんにとって大きなダメージとして残りました。
だけど、彼との別れがYさんにとって大きかったのには、さらに理由がありました。

その理由とは、「大好きだったお父さんとの別れ」を思い起こさせるからでした。

大好きだった彼との別れに、お父さんとの別れが影響しているなんて。
ふつうはわからないものです。

だけど、深層心理をひも解いていくと。
お父さんとの別れの影響が、Yさんの恋愛に色濃く影を落としていたのです。

大好きだったお父さんとの別れ

Yさんは、お父さん大好きっ子でした。
お父さんはYさんのことをとてもかわいがっていて
「お前の結婚式で、泣きながらバージンロードを歩くのが夢だ」と言っていたそうです。

Yさんにとっても「お父さんと一緒にバージンロードを歩くこと。そうやって送り出してもらうこと」は大事な夢になっていました。

けれど、Yさんがハタチの頃にご両親が離婚。
お父さんがギャンブル依存になり、これ以上家族と一緒にいると家族にも負担がかかるというギリギリの選択でした。

子どもの頃は、とてもかっこいい自慢のお父さんだったのに。
お父さんは仕事で思いもよらぬ大変なことが起こり、ギャンブルをするようになったそうです。

両親が離婚するとき、お母さんから「ひとりでも生きていけるようにしなさい」と言われたといいます。
人生、何が起こるかわからない。そのときのお母さんの気持ちから出た言葉を、Yさんは心に刻むことになりました。

お父さんは離婚するとき、いつか必ず更生して迎えに来るからと言ったそうです。
だから、いつか来てくれると思ってた。

だけど、お父さんから連絡が来ることはありませんでした。

お父さんそれって、どういうこと。
来てくれるって言ったじゃん。
だけど来てくれないって、私のことそんなに好きじゃなかったんだ――。

お父さんに、怒ってたんです。
あまりに悲しくて、怒っていたんです。


大好きだったお父さんが、ギャンブルによって変わってしまったこと。
あんなに私のこと好きだと言っていたのに、離れて行ったこと。
そのときと同じつらさを、彼と別れたときにも味わったのです。

そして、こう思うようになりました。
「私にはどうにもならないことで、別れることになった。
もう二度と、こんな別れは嫌だ」

それ以来、誰かを大好きになる気持ちも閉じ込めてしまったのです。
もう別れるのは嫌だから。
大好きな人と、別れるのは嫌だから。
だったら、誰も好きにならなきゃいいんだ――。

だけど、ほんとうは取り戻したかったんです。
誰かを大好きになる気持ちを、取り戻したかったんです。

昔の失恋の心残りを、言葉に出して話してみる

カウンセリングでは、別れた元彼への思いを癒していきました。
大きな失恋をしたとき、相手に言えなかった想い、伝えられなかった想いが心に残っていることがあります。
昔の失恋であっても、心残りが残っていると「しこり」になってしまうことがあるんです。

心のしこりを溶かすために、10年前の失恋であっても、心残りを伝えるといいんです。
直接本人にではなく、カウンセリングで話すことで、心残りを終わらせていくことってできるんです。

心に溜めたままにしていると、終わりにすることができないんですね。
だから、あのとき言えなかった心残りを話していくといいんです。

心残りを話すとき、あのころの悲しかった気持ちや、どうして~という気持ちも出てきたりします。だけど、心の奥に溜まったままの心残りをカウンセリングで話していくことで、気づくんです。

「あ、私こんなにも彼のことが好きだったんだ」って。
だけどあのとき、こうも思った。
「私の彼への想いが彼の負担になったらいけない」

だから、彼への想いを閉じ込めたんだ。
彼の負担にならないように、彼への想い、大好きという彼への想いを閉じ込めたんだ。

心残りの下には、自分にとっての大事な気持ちが眠っています。
心残りの下に閉じ込めちゃったけど。
自分にとって大事な気持ちが、眠っているんです。

心の中のイメージは、書き換えられる

その後のカウンセリングでは、お父さんのことも話していきました。

お父さんがアルコール依存だったり、ギャンブル依存だったりなどがあると
昔のお父さんとは、変わり果てた姿になってしまうことがあります。

昔のお父さんとはまるで別人の、いまのお父さんの姿を見たくない。
そんな気持ちになったりもします。

場合によっては「見たくないお父さん」を心の中で黒く塗りつぶしてしまうこともあるんです。
あまりにつらすぎて、黒く塗りつぶしてしまうこともあるんです。

だけど、大好きな人を黒く塗りつぶしたままだと。
新しく出会う好きになりそうな人にも、近づけなくなることもあるんです。
誰が好きか、どんな人が好きなのかが、わからなくなっちゃうこともあるんです。

黒く塗りつぶしたところにも、やっぱり抱え込んだままの心残りの想いがあります。
あのとき言えずに飲み込んだままの、心残りの想いがあったりするんです。

ずっと誰にも言わずにきた想いを、カウンセリングで話していく。
最初に出てくるのは、怒りかもしれません。
それでも話していくんです。
すると少しずつ、心残りが溶けだしていくんですね。

そして。
心の中の思いやイメージは、自分の心の中のことなので、書き換えることができます。
心の中で黒やグレーで塗りつぶされている何かがあったとしたら。
それをイメージの中で癒してあげることも、できるんです。
カウンセリングでイメージワークをすることがあるのですが、イメージの中でしんどかった頃のお父さん、お母さんが癒されて、表情がやわらいでいったりするだけで、心がふっとラクになることもあるんですね。

そんなことをしながら、お父さんのことを話していくうちに。
「お父さんのこんなところが好きだったんだ」と思い出したといいます。
ずっと忘れていたけれど、かっこよかった頃のお父さんを思い出したといいます。

それから半年後。
出会ったそうです。
カウンセリングでイメージした通りのおだやかでやさしい、そして私を大事にしてくれる素敵なパートナーに出会ったそうです。
そして、もうすぐ入籍するんですというお便りをいただきました。
もうすぐ結婚します【結婚報告】

それまで恋愛がうまくいかなかったのが嘘のように、とんとん拍子で進んだそうです。

彼を大好きになる気持ち。
大好きな人と一緒にいたい気持ち。
大好きな人を愛したい気持ち。
大好きな人から大事に愛されたこと。

それらを取り戻したとき。
ほんとうはしたかった生き方を思い出すことができるんです。

つらい出来事があって、グレーや黒に塗りつぶしてしまったことの中に
自分にとって大切な心のパーツが埋まったままになっていることがあります。
ほんとうはしたい生き方が、埋まったままになっていることがあります。

「ひとりで立っていけるように」と思って生きてきたのには
なにか心を痛める出来事があったからかもしれません。
だから、ひとりで生きられるようにならなきゃと思って、やってきた。
それはそれで、自分にとって必要な大事なプロセスだったんです。

だけどもし、「ほんとはこんな生き方がしたいんじゃない」という心の声がしているなら。
その声は、「大事な想いが心の中に眠っているよ。それを取り出して」と伝えてきているのかもしれません。

心を痛めた出来事って癒すことができるんです。
グレーや黒に塗りつぶされていることも、癒すことができるんです。

自分を幸せにするために。

あなたの心の中にある「ほんとうはしたかった生き方」を見つけていきませんか。
ほんとうはほしい幸せを見つけていきませんか。
あなたががほんとうに望むものを手にすることができるように。

どうぞ一緒にお手伝いさせてくださいね。
いつでもお待ちしています。

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この記事の執筆者
中村陽子/心理カウンセラー
中村陽子/心理カウンセラー
4500件以上の個人カウンセリングを行う。婚活がうまくいかない、片思い、異性とお付き合いしたことがない、出産タイムリミットへの焦りなど、女性の生き方のお悩み、人生やり直したい、何がやりたいのかわからないなど自己実現のお悩みを数多くお伺いしています。 30代後半に子どもがほしいと結婚し、39歳で離婚して、40代前半は諦め&人生迷子のどん底期を味わい、45歳から「50代、60代でも花開く人生」をつくりはじめて、今にいたります。 自分らしい生き方のお手伝いしています。 ツイッター@nakamurayoko70
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