自立女性でも「あげまん」になれるの?

中村陽子/心理カウンセラー
あげまんって、どんな人のことだと思いますか?
彼女といると、自分もなかなかやるなと思える。
彼女といると、うまくいくんじゃないかという気持ちになる。
彼女といると、俺、役に立ててるって思えて、自分もなかなかだなって思える。
彼女といると、ピンチのときも大丈夫だ、なんとかなるって思える。
彼女といると、彼女のために頑張ろうと思える……。
彼女といると、楽しい気持ちになれる。

これらはぜーんぶ、「あげまん」です。
これがあげまんです、という教科書的な定義はなくて
人それぞれ、その人らしさを生かしながら、いい流れを生み出すことはできるからです。

実は、この記事を読んでいる方は、あげまん要素をいっぱい持ってる方なんです。
なぜかというと、「あげまん」という言葉に興味を持っている時点で
自分の持っている「あげまん力」を使いたいと思っている、ということなんですね。

誰かのために(いま、付き合っている人がいなかったとしても)
私もあげまんになりたいかも~と思っている時点で
もう十分、あげまんマインドをお持ちです。

そのくらい、自分にとって大切な相手を幸せにしたい気持ちを持っているのではないでしょうか。

あげまんって、ほんと、教科書的な定義はないんです。
人それぞれ、自分らしさがあるからです。
その自分らしさをいい形で使えるようにすること。

それが、あげまん力を使えるようにすることなんですね。

なぜあげまんに、なりたいの?

あげまん、という言葉に惹かれるあなたは
男性に何かをしていあげたい気持ちをいっぱい持っているのだと思うんです。

なぜ、あげまんになりたいのか。
それを探っていくことでも、自分のしたいことが見えてきます。

まずはちょっと、私の話をさせてくださいね。
以前の私は、あげまんとは真逆のタイプでした。

私は男性性が強いのですが、以前はいまよりもずっと、男性性を全面に押し出して、男っぽく生きていたんですね。

男性性バリバリで生きていたころに、長くお付き合いした彼がいました。
私の男性性が高かった分、「もっとこうしたらいいんじゃない」「どうしてこんなこともできないの」って相手にだめ出しばっかりしていたんです。

当時は、彼にもっと活躍してほしいから、だってこの人に才能があるのは私は知ってるから、だからどうすれば活躍できるようになるんだろうって思って、あれこれ相手に言っていたんですね。
で、相手はカメラマンでした。自由業で、安定していないし、仕事もなかった。
そのため、私が二人分稼げるようにならなきゃ、大黒柱にならなきゃと思い、自分自身に鞭を打って仕事をしていました。

私自身が、彼の分まで男になろうとしていたんですね。

その結果、彼は自分の男性性を発揮できなかったし、芽を出すこともできなかったんじゃないかと。
とても後悔をしたんです。

男性は、自分が守らなきゃいけない存在があったほうが力を出せる。
そこでやっとスイッチを入れられる。
俺がここで頑張らなきゃ、ってスイッチが入る。

そういうところがあるんだな、と今ならわかるけど、
昔の私は、彼の分まで男性性を引き受けていました。
そのせいで、彼が「俺がここで頑張らなきゃスイッチ」を押す機会を奪っちゃったんじゃないか。
そう思ったんです。

そんな想いがあるので、「あげまん」に興味関心を持つようになったし、あげまんになれたらいいなと思うようになりました。そして、今に至っています。

男性が力を発揮して、自分のやりたいことや大志を実現していけるように。
自信が揺らいだときは、だいじょうぶだよ、できるよって力づけたい。
自分自身の反省や後悔の想いから、こんなことをしたいなと思っているんですね。

なぜ、あげまんになりたいと思うのか。
あなたは、どうしてあげまんになりたいって思うのでしょうか。

もしかしたら、子どもの頃。
お母さんがいつもお父さんに文句を言っていて、そんなお父さんをかわいそうに感じていた。お父さん、あんなふうに言われっぱなしで、かわいそうって。だから自分は、男性のいいところを見られるようになりたいと思うようになった。

お父さんがなぜか孤独を感じる人だった。どこかひとりでさみしそうに見えていた。だから自分は、男性の横で笑ってあげられるようになりたい、「これ楽しいね、これおいしいね」って一緒にいろんなものを味わってあげたいと思うようになった。

お父さんがなかなか家に帰ってこない人だった。家に居場所がなかったのかもしれないと思う。だから自分は、相手を受け入れてあげる人になりたい。あいつと一緒にいると、なんか安心するんだよなって思ってもらえるような存在でいたい。

きっとそれぞれ、思うところがあるのではないでしょうか。

Q.
あなたは、あなたの大切な彼に、何をしてあげたいですか? 
何を感じさせてあげたいですか?
彼にとって、どんな存在でありたいですか?

自立女性でも、あげまんになれるの?

自分でいうのもなんですが。
私はかなりお買い得ですよ~。私と付き合う男性はラッキーですよ
と思っています。

ちょっと前まで、
「私は勝気だし、論理的だし、守ってあげたいタイプじゃないし。私はかわいげないから。隙がないから……。こんな私では、男性に受け入れてもらえないんじゃないか」と、めちゃめちゃ思ってました。

自分のことを、ものすごく、否定していたんですね。

しっかりしている=守ってあげたくなるタイプじゃない
なんでも自分でできてしまう=かわいげがない
論理的=男性を論破してしまう

自分が、自分の要素を「否定的にとらえていた」んです。

だけど、ちょっと見方を変えると、同じ要素でも違う解釈ができるんです。

しっかりしている=対等に話せる、頼りになる
なんでも自分でできる=手がかからない
論理的=男性に理解しやすく話ができる

どのように解釈するか次第でまったく変わってくるんです。

「自分にはかわいげがないから」「自分は守ってあげたいタイプじゃないから」
自立的に生きてきた女性の方々から、同じような声をよく伺います。

だって男性は、守ってあげたくなる女性がいいんでしょ。
かわいげのある女性がいいんでしょ。
私みたいに隙のない、何でも自分でできてしまう女では、ダメなんでしょ。

だけど、こんな思いの裏側に
自立的に生きてこざるを得なかった、何でも自分でできるようにしてこなければならなかった
そんな悲しみがあるようにも、思うのです。

ほんとうは私だって、誰かに守られたかったし、頼りにだってしたかった。
だけど、そんな気持ちを押し殺してやってきた。
そんな悲しみがあるように、思うのです。

しっかりしている、自分で何でもできる
ことと
自分で何でもやらなければいけない、人になんて頼れない
こととの間には、大きな違いがあるんです。

昔の自分は、後者でした。
自分でやらなくてはいけない、人になんて頼れない、頼るわけにはいかない。

だから、受け取ることができなかったんです。

受け取ることができないとは
自分だけの力で何とかしなくてはいけない、すべて自分でやらなくてはいけないと
誰のこともあてにしない生き方、ともいえるかもしれません。

そういうふうに生きてきたのには、その人なり事情があります。
だから、いいとか悪いとか、そういうものではないんです。

それでも「自分でやらなくてはいけない」「自分の身は自分で守らなくてはいけない」「誰のこともあてにしない」がだんだんとゆるんでいくと
受け取れるようになっていくんです。

ほんとは自分でしなくてはいけないのに、できていないくて情けない、恥ずかしいなどと思わずに
ただ、ありがとうと思いながら受け取ることを自分に許可できるようになり、
相手がしてくれていることや想ってくれていることに気づけるようになり、
してくれて、想ってくれてありがとうと、受け取れるようになり。

そうなると、「自分はかわいげがない」って思わなくなるんです。

しっかりしていて、何でも自分でできて、根性が据わってて、ひとりでどこでも行けちゃって、論理的に話す
というしっかり者の基本タイプは変わっていなくても
やさしさや愛情、相手がこちらに向けてくれている想いに気づいて受け取れるようになるから
自分にはかわいげがないって、思わなくなるんです。

そして持ち前の度量や包容力をいいふうに使えるようになっていきます。

相手を理解する力、ものごとをいいふうにとらえる力、大丈夫だよ、なんとかなるよと言えちゃう力
応援する力、自分を楽しませることのできるご機嫌力、母性など
自分がもともと持っているものに光を当てて、「いいもの」と思えるようになっていきます。

自分らしい自分のよさを、いいものとしてとらえられるようになっていくんですね。

自分流のあげまんの見つけ方

いろんなスタイル(人それぞれのスタイル)のあげまんがあります。
人と同じじゃなくて、ぜんぜんよくて、あなたにはあなたのあげまんスタイルがあります。

自分のこと、ぜんぜんあげまんだなんて思えません。
もしいま、そう感じていたとしても。
あげまんに興味を持っている時点で、「誰かのために、いい流れを呼び込める人になりたい」と言っているわけで。十分すぎるほど、あげまん要素を持っています。

で。
自分では、ぜんぜんあげまん力があると思えません!というなら。
人の中に、あげまん要素を見つけていくと、いいんですね。

Q.
・あなたが「この女性、素敵だな」「この女性のこういうところ、あげまんだと思うな」と感じる人は誰でしょう。身近な人でも、有名人・著名人でもかまいません。
・その人のどんなところをあげまんに感じますか?

この問いに、一度しっかり答えてみてくださいね。
ノートに書きだしてみてください。

いま、書いたあげまん像や、あげまん要素。
実は、自分の中にもこの要素があるんです。

心理学に投影の法則というものがあるんですね。
どういうことかというと、相手の中に見えるものは、自分の中にもあるから見えるという法則です。

なので、誰かの中に見ることができたあげまん要素は、自分の中にもあります。
自分の中にそれをキャッチする要素があるから、「あの人のこういうところが、あげまん」って感じることができるんです。
ここ、めっちゃ大事なポイントなので、スルーしないで、ちゃ~んと受け取ってくださいね。

いやいや、私にはないでしょっていう気持ちが出てきたとしても
その要素が自分の中にあるから、見えるんです。

だから、「自分の中にもこんな要素があるんだな」とまずはいったん思うこと。
そのうえで、「私もこの要素を、誰かに与えられるようになりたい」と思うこと。そして使っていくこと。
そうすると、人の中に見えた要素を、開花させていくことができるんですね。

たとえば。
私の場合、漫画家の安野モヨコさんを「あげまんだな~」と思います。
エヴァンゲリオンの庵野秀明監督の奥様です。

NHKのプロフェッショナルという番組で、庵野秀明さんを取り上げていたんです。
エヴァの庵野さんが、まあ奇人変人なわけなんです。

日本のオタクの四天王のうちの一人、と言われるほどにオタクだし、自分の命よりも作品のほうが大事でしょと言い切る人なんですね。
作品をつくるということをしないと、生きていくことができない。

何かの作品を作っているときのエピソードに、監督は1カ月お風呂に入らなかったというものがあります。
なぜって、お風呂に入るような時間は、監督にはないからです。
そのくらい、作品命の人なんですね。

命を削りながら作品をつくる庵野監督なんですが。
前回のエヴァンゲリオンをつくったあと、本人曰く「壊れた」と。
うつ病になってしまったそうなんですね。

その時に、安野モヨコさんは「誰かが一緒にいてくれるだけで、救われる部分ってあると思う」と思い、庵野監督に「みんながいなくなっても、私はいなくならない」と告げたんだそうなんです。

もう、このエピソードで、エヴァファンは安野モヨコさん、神ってなりました。
今回エヴァンゲリオンが完成したのは、安野モヨコのおかげだ~って。

プロフェッショナルの最後に、シン・エヴァンゲリオンの初号試写会のシーンがあるんですね。そこで、試写が終わって出てきた安野モヨコさんが、監督のところに行って拍手するんです。よかった~みたいなことを言ってるんだと思うんですが、またそのときに庵野監督がうれしそうな顔をしてるように、私には感じたんですね。

奥さんにほめられるのがうれしいんだろうな、庵野監督って。
最高のシーンだなと思いました。

安野モヨコさんのエピソードを見ていて
私が感じたあげまんを文字にすると、こんな感じです

・彼のことを理解している、彼にとって大事なものを理解している
・彼が自分の世界で頑張っているときには、放っておいてあげられる
・いざというときは、彼の絶対的な味方でいる
・彼が自分の成し遂げたいことを成し遂げられるように、体のことに気を配ってあげられる
・彼に関心を向けてよく見ながらも、放っておいてあげられる
・彼の外見をかっこよく整えてあげる
・自分の世界は自分で持っていて、自分のことは自分で満たせる

こんなふうに、「この人ってあげまんだな~」と思う人の中に、自分は何を見ているのかなんです。
同じエピソードを聞いても、ほかの人は別のものを見ると思うんですね。
なぜなら、そこに、人それぞれの自分らしさや個性があるからです。

私が使いたいあげまん要素は、上記のようなものということになります。

だけど、人が違えば、使いたいものは全然違うんです。
だから、教科書的な定義ってないんですね。

こうじゃなきゃいけないとか、こういうもんだとかはなく
自分がどんなところ惹かれるのか、なぜ惹かれるのかを探っていく中で
自分らしいスタイルが見えてくる、ということなんです。

自分はいろんなことを楽しむのが好き。
彼と一緒にいるときも、これいいね~、これ面白いね、これおいしいねってなんでも楽しめちゃう。
たとえばそんなタイプなら、
いろんなことを楽しむことを通じて、相手にいいものを与えるスタイルのあげまんですよね。
彼女は僕と一緒にいるとき、うれしそう。
僕は、彼女を楽しませることができてる。
あなたと一緒にいることで、相手はそんな気持ちを感じることができます。

あげまん要素を見る相手は、女性でなくてもかまいません。
私にとっては新庄監督も、あげまん要素をいっぱい持ってる人だな~って思うんですね。
自分がいきいきと自分の信念を信じて、やりたいことをやっている。
そのエネルギーで、周りにいい影響を与えているところがあげまん。

たとえばそう思ったなら、それも自分のあげまんリストに加えちゃうといいんです。

あげまんになりたい。
そう思っていること自体、愛したい気持ちや女性性が豊かにあるという証です。

その愛したい気持ちを、自分の中でくすぶらせることになく、注いでいけますように。
くすぶらせちゃうことって、つらいから。

なぜか自分の中にある情熱を、うまく表に出すことができない。
なんかもやもやと、くすぶっているところから抜け出せない感じがある。
もしそんなときには、いつでもご相談くださいね。
あげまんマインドをもつあなたを応援してます!

この記事の執筆者
中村陽子/心理カウンセラー
中村陽子/心理カウンセラー
4500件以上の個人カウンセリングを行う。婚活がうまくいかない、片思い、異性とお付き合いしたことがない、出産タイムリミットへの焦りなど、女性の生き方のお悩み、人生やり直したい、何がやりたいのかわからないなど自己実現のお悩みを数多くお伺いしています。 30代後半に子どもがほしいと結婚し、39歳で離婚して、40代前半は諦め&人生迷子のどん底期を味わい、45歳から「50代、60代でも花開く人生」をつくりはじめて、今にいたります。 自分らしい生き方のお手伝いしています。 ツイッター@nakamurayoko70
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