自己実現、やりたいこと

チベットの空と都市とロックダウン

これまで世界のあちこちに、出かけてきました。
なかでも、何もない場所が大好きで、ほんとに何もないところでぼーっと空を眺めていました。

たくさんの空を見てきたけれど、私の中で「こんな空、あるんだ」と感動したのがチベットの空でした。

そこには、ヒッチハイクして、車の荷台に乗せてもらって行きました。
もう何十年も前だから、いまは違っているかもしれないけれど、当時はラサからネパールに抜ける一本道があって、その道沿いにぽつんと一軒の宿があるだけの場所でした。

宿のほかには、いくつかのパオ(テント風の住まい)があって、遊牧民の家族が暮らしていました。そのパオに遊びに行ったら、現地の濁酒(ドブロク)をすすめられ、ぐらんぐらんになって宿に戻った記憶があります。

とにかく何もない場所で。
遠く向こうに見える山々の上に雲が通ると、頂上が白くなる(雪で)。
そんな場所でした。

たぶん標高は4500メートルくらいあったんじゃないかな~。
ふつうの平場が。

井戸水で顔を洗うわけですが、標高4500メートル(たぶん)の井戸水って冷たいのなんの。まともに洗えませんでした。冷たかったー。

で、何もすることがないので、丘に上がって、ただ遠くに見える山々とか空とかを、ただただ眺めていました。
ときどき向こうから車が一台やってきて、土ぼこりをあげながら走り抜けていきました。

雲にも詳しくなりました。
あ、あれ雨雲だ。
見て、わかるんです。
雲から雨が降っているのが、そのまま形になってるからわかるんです。
来るぞ来るぞ、雨が来るぞ。早く帰らなきゃ~。
雲に追い越されないように走って宿に戻ります。

標高の高い場所って、雲が近いんです。
だから、雲の影がまっすぐドンと落ちるんです。
そんな雲や影がなんだかとても好きでした。

そんな何もない場所の夕景は、びっくりするくらいの色彩で。
雲の色が右から左へと黄色、オレンジ、ピンク、薄紫……とグラデーションになっていて、しかも色が刻々と変化していくんです。
すごいーーーー。
どんなアートもこの夕景にはかなわないと思ったのを覚えています。

これまでたくさんの空を見てきたし、たくさんの愛すべき空と出会ったけれど、やっぱりあのときの空は一生忘れることはないでしょう。

その旅は、何カ月もかけて放浪しました。
どこに行く当てもなかったので、行き当たりばったりの旅でした。

お金がなくなって東京に戻ると、都市生活のルールの中にすぐに戻りました。働いたり、飲み会に行ったり、家賃を払ったり。

だけど、ときどき思い出すんです。
東京の朝焼けの空を見たりしながら、「あ、この空も、昔見たあの空につながってるんだよな」って思い出すんです。

いま都市にると、忘れてしまうものだけど…

東京にいると、家賃払ったり、食材買ったり、年金払ったり、貯金数えたり、これからの経済どうなるんだろうって心配したりしながら、将来を憂いて不安になったりもするけれど。

東京もほんとは地球の一部なんだよな、あのチベットと同じ地球の一部なんだよなって、ときどき思い出すんです。
都市生活をしていると、なにかがちょっとでも不具合が起きると生活が崩れていくような気がしてしまうものだけど。

だけど、あのぽつんと一軒宿にいたら、生活が崩れるなんてこと、まるっきり想像することないんです、きっと。

水が冷たくて顔が洗えないことに、ションボリすることはあっても、不自由さはそのくらい。
食べて、笑って、散歩して、寝て。

たぶん生活ってほんらいシンプルなもので。
好きな人がいて、おしゃべりできる仲間がいて、仕事があって、笑ったり面白がったり怒ったりできていたら、それでいいんだよなということを思い出させてくれるのです。

このところ、ちょっと物々しくなりつつあるけれど。
そんなときこそ、チベットのあの空を思い出そうと思うんです。

あの空とこの空は、つながっているのだし。
あの空の下では心配しなくていいことが、この空の下では心配しなきゃいけなくなるのは、考えてみたら、ん?って思うし。

広大な大地にいると、大きな大地の中に自分を感じます。
大きな大地に、自分(たち)が何かをできるとは思わない。
大きな自然を、自分(たち)がコントロールできるとも思わない。
自分が計画を立てて、計画通りに何かを進めたいとも思わない。
コントロールという発想が、そもそもない。

コントロールとは、自分が計画できるという発想。
自分(たち)の思い通りに、ものごとを組み立てられるはずだという発想。
それは、大自然や神より、自分(たち)のほうが偉大だと言っているのと同じことならしいんです。

自分たちが世界をつくり、掌握できると思っていると、その歯車がちょっとでも狂い始めると、まるで世界が崩れるように感じて、不安が生じ始めるようです。

だけどコントロールがない世界には、不安もないようです。
こうじゃなきゃいけない、こうじゃなきゃ困る、こうじゃなくなったら困る……がないので、不安がないのです。

こんな物々しいときこそ、人間よりも大きな存在を思い起こすといいのかもしれないと、思うのです。

太陽はどこにも同じく降り注ぎ、星も同じくまたたいている。
その恵みの中にいるんだよね、と思い出すといいのかもしれないと思うのです。
大いなるものの中にいることを、思い出すといいかもしれないと思うのです。

雨が降るときは降るし、井戸水の冷たいのは変えられないし。
それでも空は美しかったし、生きている実感がありました。

ふとチベットの空を思い出しました。
この空とあの空がつながっていることを、ときおり思い出したいと思うのです。

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中村陽子/心理カウンセラー
中村陽子/心理カウンセラー
カウンセリングサービス所属。恋愛、婚活、片思い、復縁、生き方、自己実現などなど……年間600件のご相談を受けています。「このままでいいのかなと、もやもやする……」そんなときは電話カウンセリング(45分間/初回無料)もお気軽に使ってみてくださいね。ツイッターでも幸せをつかむマインドづくりのコツつぶやいてます@nakamurayoko70